米国のロボット研究第一人者が開発軸から言及した注目の日本企業

カリフォルニア大学サンディエゴ校・ヘンリック・クリステンセン教授氏に聞く

 ―ロボットの利用が広がっています。
 「導入が最も進んでいるのは製造業だ。ただ、作業者約100人当たり1台のロボットが使われている状況で、普及率は高くない。物流業界では作業の簡素化に役立っているし、家庭では自動掃除機などが使われている。医療では手術や介助などで約1万台のロボットが導入され、防衛では地雷の探査や監視用の無人機など陸や空で使われている。宇宙では国際宇宙ステーションなどで活用が進む」

 ―今後の見通しは。
 「世界で労働人口が減少し、製造業ではおそらく作業者20人に1台のロボットを活用する規模にまで拡大する。コミュニケーションロボットや家事支援ロボットには、ソフトバンクなどが参入しているが、製造業で高い水準のロボットを開発するファナックのような企業はまだなく、有望な新規市場になる。教育では生徒一人ひとりの学習状況に応じて教えるロボットの導入が広がるだろう」

 ―ロボットがさらに発展するために何が必要でしょう。
 「新たな領域を広げて事業化し、ビジネスとして前進させることだ。2020年に開かれるロボットの国際競技会・展示会『ワールド・ロボット・サミット』(WRS)はビジネスチャンスや、新たな投資先を見つける一助になる。想定される活用事例が事業につながるシナリオを描き、競技を通じて誰が一番うまく解決できるかを見いだす。最終的にその解決策を企業に移管し、事業に結び付くようにする必要がある」

 ―WRSではどのような課題が想定されますか。
 「例えばロボットは柔らかい素材をつかんだり、ジッパーを開け閉めしたりする作業が苦手。これらを克服できれば製造業で自動化が進展するだろう。一方、現状は投資家と研究者が議論してビジネスを作り込む機会が少ないので、WRSが触媒となり事業化のきっかけとなれば良い」

 ―現在はどんな研究を手がけていますか。
 「日々の生活を素敵にするためのロボットをつくりたい。そのためには人を理解する必要がある。人の表情から喜怒哀楽を読み取り、それに応じてロボットの振る舞いを変えることで、人が飽きずにロボットと関われると考えている」
(聞き手=西沢亮)

<ワールド・ロボット・サミットとは>
2015年に国が策定した「ロボット新戦略」に基づき、経産省とNEDOがロボットの研究開発と社会実装の加速を狙いに開く。内外の優れたロボット技術を集結し競技大会や展示会などを行う。プレ大会は東京ビッグサイトで18年10月17日―21日、本大会は愛知県国際展示場で20年10月上旬に開催予定。プラントやトンネルなど特別な施設が必要なインフラ・災害対応分野の一部競技は同年8月中旬に福島ロボットテストフィールドで開く。

日刊工業新聞2017年9月8日

日刊工業新聞 記者

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09月11日
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ロボットでは機械、センシング、人工知能(AI)の開発軸がある。日本は他国と比べセンシングやAIの経験が浅く、3軸を理解する研究者が足りない。一方、企業では「AIでソニー、センシングではニコンが優れるが、開発段階での連携が不足している」とクリステンセン氏は指摘する。企業の枠を超えた連携が重要性を増す。
(日刊工業新聞第一産業部・西沢亮)

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