「産学連携」と「大学教育」の接近、駆動役は誰?

文科省が予算措置も、大学の現場教員には十分に伝わっていない

 文部科学省の2018年度予算の概算要求における産学連携関連では、博士人材育成との連動と、産業界からの投資の大型化が注目される。多様な組織連携が重要な「卓越大学院」プログラムと、年数千万円を1企業から引き出す「オープンイノベーション(OI)機構」の2新規事業がそれを象徴する。既存事業を絡ませながら研究や教育、社会連携の相乗効果を引き出す工夫により、大学が新たな支援を得ることになる。

 「産学連携の実例を大学教育にどのように導入するか。科学技術・学術政策局と高等教育局が連動しながら高度化を図りたい」。文科省・官房会計課は18年度の概算要求のポイントの一つをこう説明する。

 100億円の予算要求が目を引く卓越大学院プログラムは、超スマート社会「ソサエティ5・0」の実現に向けた5年一貫の博士人材育成となる。

 企業などとの人材交流や共同研究の持続性も重視して最大10年間で支援。初年度採択は15件程度だ。すでに大型産学連携事業の「センター・オブ・イノベーション(COI)プログラム」に参加する拠点大学からは、「COI連動の卓越大学院プログラムを設計中」との声が聞かれる。

 一方、OI機構は研究型大学において企業から大型資金を引き出す新組織だ。市場ニーズ分析や事業化シナリオ提案によって企業を本気にさせる「プロデューサー」の人件費などで21億円を盛り込んだ。

 ただプロジェクトの執行は、各研究事業の予算となる。そのため、既存の産学連携支援事業「産学共創プラットフォーム共同研究推進プログラム(OPERA)」の中に、OI機構連動型の予算を10億円規模で要求。年1億円で10領域を支援する方針だ。

 また「『産学連携の大型化を急に企業に求めるのは難しい』という大学向け」(科学技術・学術政策局の産学連携・地域支援課)に、企業化調査(フィジビリティースタディー、FS)も3000万円と小規模で4領域に用意した。

 併せて、科学技術振興機構(JST)におけるファンディング(競争的資金の配分)改革も18年度に行う。現在の科学の延長線上の成果を追求する「戦略的創造研究推進事業」の成果を、社会ニーズに対応する「未来社会創造事業」で生かすため、展開中の各種プログラムを大きくこの二つにまとめていく。

 これに向け技術移転支援の事業「エーステップ」でステージIの新規採択を停止しつつ、試作品開発のための新施策も出される。

 一般的に機械や材料の分野では試作品開発が実用化に向けた概念実証(POC)として企業の投資を促している。この試作に使う基金「ギャップ・ファンド」を立ち上げ、産学協同申請に1件年1000万円まで応援する。
               

(文=山本佳世子)

日刊工業新聞2017年9月7日

山本 佳世子

山本 佳世子
09月11日
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産学連携と大学教育の接近は、ここへきて急激な変化となっている。「卓越大学院」プログラムも構想初期の文部科学省の言及に比べると、かなり踏み込んで、産学連携活動との連動を促している。しかし、大学の現場教員にはそのことが十分に伝わっていない。私自身は「大学は多様」であり、「大学の個性化を重視する以上、それでいい」と思う。が、大学の執行部も現場教員も、「社会がどのような動きになっているか」を知らないままなのと、知ったうえであえて自らが重要と思う道を選ぶのとは、まったく違う。注意が必要だと感じている。

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古川 英光
古川 英光
09月12日
「卓越大学院」×「オープンイノベーション(OI)機構」という一層踏み込んだ新事業構想が進んでいます。だのに「大学の現場教員にはそのことが十分に伝わっていない」という、この記事のファシリテーター山本佳世子さんのご指摘に全く同感です。
  

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