販売目標は月800台。それでもスバルが「レガシィ」を大切にする理由

米国のディーラーは母国・日本での評価を常に気にしている

 新型の「インプレッサ」や「XV」が好調なSUBARU(スバル)。3年前に全面改良した旗艦車種「レガシィ」も波に乗りたいところだ。かつて国内で月1万台売れる車だったが、国内市場の変化により現在の主戦場は米国に移った。昨年、米国でセダンの販売が鈍化し、在庫が計画より5000台ほど増えた際に生産調整もした。

 今回、「レガシィアウトバック」とセダン「同B4」を大幅改良し10月5日に発売しテコ入れを図る。運転支援システム「アイサイト」に搭載されている前車追随機能の作動車速域を時速0キロ―120キロメートル(従来は同0キロ―100キロメートル)に広げたほか後退時自動ブレーキシステムを追加して安全性能を高めた。

 電動パワーステアリングの改良やサスペンションのチューニングを見直しステアリングの応答性能や乗り心地が向上した。エンジン部品の軽量化や変速機の改良で燃費性能と静粛性を高めた。内装はセンターパネルやステアリングホイールのデザインを変更し、質感を上げた。

 外装はフロントグリルやバンパーのデザインを変更し、アウトバックは上質さや力強さ、B4はスポーティーさを際立たせた。

 主力市場の米国で快走を続けているスバル。8月まで69カ月連続で前年の販売実績を上回っている。今回、改良する「レガシィ」の国内販売目標は月にわずか800台。現状、スバルの世界販売は主戦場の米国が全体の6割を占め、日本は15%にとどまる。それでもスバルが日本市場にこだわるのはなぜか。

 「日本でもこの車は売れているのか」。ある米国スバルディーラー幹部は国内生産拠点がある群馬県太田市を訪れた際、スバル車の販売店に必ず立ち寄り、決まってこう質問する。店員が「売れている」と応えると満足げな表情を浮かべて帰って行く―。

 「米国のスバルユーザーやディーラーは母国市場の日本でスバル車がどれだけ評価されているかものすごくチェックしている」。国内営業を統括する細谷和男専務執行役員は日本市場の重要性を強調する。

 例えば運転支援システム「アイサイト」。米国が訴訟大国ということもあり現地ディーラーは当初、顧客へのアイサイトの提案に積極的ではなかったという。

 万が一アイサイトが正常に機能せず事故が起きた場合、訴訟の対象になるからだ。だが日本でのアイサイト搭載車種の売れ行きや性能の高さを見て“売れる”と確信。本格提案に踏み切るディーラーが一気に増えた。

 主戦場は米国だが「スバルのブランド発信基地が日本であることに変わりない」と細谷専務は断言する。

 2016年10月に発売した新型「インプレッサ」。商品開発会議では車幅を巡って開発部門と国内営業部門との間で激論が飛び交った。スバル車は米国に照準を定めた車作りを進め「レガシィ」は従来よりサイズが大きくなった。

 スバル車の16年国内シェア(登録車)は約4%。「全需の拡大、縮小は規模が小さい我々にとってあまり関係ない。個性のある魅力的な商品を出し続け、伝えていけるかが勝負所だ」(細谷専務)。

 「車を買っていただいた後の(顧客)対応が最も大切」。吉永泰之社長がこう強調するのは近年ブランドイメージが向上しいわゆるスバル車の熱狂的ファンである「スバリスト」以外にも顧客層が広がったためだ。旗艦車種「レガシィ」を愛する人は、とても大切なインフルエンサーでもある。

日刊工業新聞2017年9月6日の記事の大幅加筆

明 豊

明 豊
09月11日
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レガシィの国内でのマーケティングは難しいだろう。吉永社長は以前、「スバル360のように、今は『レガシィ』シリーズが歴史になってきている」と話していたことを思い出す。まさに“レガシィ”としての役割か。

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