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夏場には40度Cもあったマツダの鋳物工場が涼しくなったワケ

ガスバーナーから電気式ヒーターに切り替え。安全面でもプラスに
夏場には40度Cもあったマツダの鋳物工場が涼しくなったワケ

鋳造工場で導入した電気式の取り鍋加熱装置

 真っ赤に溶けた鉄がキューポラから流れ出る。マツダ本社工場の宇品工場・中地区に位置する鋳造工場。ハンドルの舵(だ)角を車輪に伝えるステアリングナックルの鋳造を受け持つのが、第3パワートレイン製造部第2素材課第2鋳造係。環境改善などを目的に、電気ヒーターで取り鍋を加熱する装置を導入した。

 溶けた鉄を取り扱う取り鍋は、鉄製容器の内部に耐火物を張った構造。マツダでは1日使うごとに冷まして中の耐火物を塗り直し、使う前に再度加熱して温度を高めている。耐火物を十分に乾燥させなければ、溶湯を注いだ際に水蒸気爆発が起きる恐れもある。

 電気式ヒーターの導入以前はガスのバーナーで暖めていた。鋳造工場では一般的な方法だが、炎であぶるために取り鍋のふたは開けっ放しで、熱が逃げて効率が悪い。

 工場の気温が高くなり労働環境が悪化する要因の一つにもなっていた。これに対し電気式ヒーターでは取り鍋にふたをしたまま暖められる。

 従来式では使ったエネルギーの8%しか活用できておらず、48・8%が開口部から逃げた。電気式では70%を取り鍋の加熱に使え、開口部からの放熱は2・8%に抑えた。単純計算で実に9分の1近い省エネになる。加熱にかかる時間も58分から30分に短縮できた。

 第2素材課の中尾和浩マネージャーは「3年前から“涼しい鋳物工場”を目指して改善活動を続けてきた。夏場40度C近くあったのを30度Cちょっとまで下げてきたが、その施策の一つがこのヒーター」と話す。

 バーナーでは安全のため担当者がつきっきりでいる必要があったのが、不要になったのも大きい。
【事業所概要】
▽所在地=広島県安芸郡府中町新地3の1、082・282・1111▽主要生産品目=自動車、エンジン、変速機▽年間エネルギー消費量=889万8000ギガジュール(15年度、国内主要4拠点合計)▽年間CO2排出量=52万1000トン(同)
(文=広島・清水信彦)
日刊工業新聞2017年9月7日
清水信彦
清水信彦 Shimizu Nobuhiko 福山支局 支局長
ヒーターは日本ルツボの「ELEMAX」を採用。導入に当たっては炭化ケイ素(SiC)製の電熱線本体が壊れにくいよう固定方法を改良したり、耐火物から発生する水蒸気を抜けやすくする機構を開発するなど、マツダと一緒になって改善に当たった。「ほかの取り鍋やアルミの鋳造にも展開できれば」(中尾マネージャー)という。

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