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「対話ロボ導入したけど効果がわからない」を解決するシステム

富士ソフト、導入効果見える化
「対話ロボ導入したけど効果がわからない」を解決するシステム

高齢者福祉施設で活躍する対話ロボ「パルロ」

 富士ソフトの人型コミュニケーションロボット「パルロ」は、900カ所の高齢者福祉施設に導入されている。パルロを使った現場では、高齢者が起き上がる、食事をする、動き回るといった生活面の行動が活発になる効果が見られている。多忙な施設でもロボット利用の効果を科学的に検証しロボット導入効果を出せるよう、同社は簡単に高齢者の生活機能をチェックするシステムを開発した。
 開発したシステムは「ICFチェッカー(仮)」。ICFは世界保健機関(WHO)が定めた人間の生活機能や障害を評価する基準で、高齢者福祉施設を利用する高齢者の変化を膨大な項目でチェックする。

 ICFはロボットを導入した際、エビデンス(科学的根拠)に基づいた改善効果を検証するのに適した半面、「目指す効果」「できる効果」といった区分別に、細かく生活面のチェック項目が設定されている。20分おきのチェックが求められるケースもあり、介護をしながら細かくチェックしていくのは作業面の負担が大きい。検証するにも紙のデータから表計算ソフトでデータを作る必要がある。

 そこで、富士ソフトはスマートフォンやタブレット端末を使って簡単にチェックできるシステムを作り上げた。過去の知見を基に、ロボットを導入した際に生活面の変化がある項目を絞り込んでチェックの数を減らした。スマホで片手でも簡単に入力でき、同時にデータが電子化できており分析も楽になる。富士ソフトの高羽俊行PALRO事業部フィールドセールス室室長によると「これまでの実証実験の結果から、改善効果が数値として分かると職員の意欲が高まる」ことが分かっている。せっかくロボットを導入しても、効果的に活用できなくては無駄になる。ICFチェッカーは無償で提供し施設の高度化に貢献したい考えだ。

 将来的には、ICFチェッカーで蓄積し分析したデータとパルロを連携させていく。高齢者個人ごとに、高めたい生活機能に応じてパルロが対話の内容を変えたり体操や運動を促したりする、といった活用でQOL(生活の質)を高めるようにしていくという。

 ICFチェッカーは、27―29日に東京ビッグサイト(東京都江東区)で開催される福祉関連の展示会「第44回国際福祉機器展H.C.R.2017」で参考出展する。
(石橋弘彰)
日刊工業新聞2017年9月8日
昆梓紗
昆梓紗 Kon Azusa デジタルメディア局DX編集部 記者
ロボット導入の課題の1つが継続性。「費用をかけたのに効果がわからない」となると継続して使ってもらえなくなってしまいます。

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