東芝メモリ売却が最終局面に。サプライヤーは“WD推し”

「円滑にプロジェクトを進めるにはWDとの協業がベスト」(装置メーカー)

 東芝の半導体子会社「東芝メモリ」売却交渉が最終局面を迎えた。売却先候補は提携先の米ウエスタンデジタル(WD)が軸の「新日米連合」と、米ファンドのベインキャピタルが主導する「新日米韓連合」に絞られ、東芝は今週にも売却先を決めたい考えだ。メモリー生産を支えるサプライヤーからは、提携相手のWDが軸となる「新日米連合」を推す声があがっている。東芝のメモリー事業では今後、四日市工場(三重県四日市市)の新棟や、岩手県北上市に建設予定の新工場など重要案件が続く。成功体験を共有する東芝とWDのコンビで、日本国内で事業を発展させてほしいという思いがサプライヤーには強い。

 東芝は新型の3D(3次元)NAND型フラッシュメモリーの生産能力を高めるため、岩手県北上市に新工場を建設する方針。ライバルの韓国サムスン電子との今後の戦いを左右する重要拠点だ。東芝と取引する製造装置メーカー幹部は「円滑にプロジェクトを進めるにはWDとの協業がベスト」と指摘する。

 東芝は2000年、米サンディスク(SD)とメモリー事業で提携。16年にSDを買収したWDが新たなパートナーになった。世界シェアで東芝が2位、WDが3位につける。

 両社の提携は生産設備投資や開発は協力する一方、日々の工場運営は東芝が一手に担っている。東芝のメモリー事業の強みは歩留まりを高める生産技術にある。日本国内に集積する半導体製造装置や素材メーカーなどのサプライヤーが支えてきた。

 一方、サプライヤーは“四日市”との取引で技術を磨き、事業を発展させてきた。東芝メモリが主導する形で、生産技術に乏しいWDと今の形で協業が続けば、好循環を国内で維持できるとサプライヤーはみている。

 東芝メモリ売却をめぐっては、米ファンドのベインキャピタルや韓国SKハイニックスで構成する「新日米韓連合」も候補に挙がっている。同業のSKハイニックスが買収することになれば「四日市工場の運営に口を出してくるだろう」と半導体製造装置メーカー幹部は警戒する。

 WDとの売却交渉は、WDが東芝メモリの経営に深く関与する姿勢を示し行き詰まった。WDはシンガポールなど海外に工場を設置するアイデアを持っている。WDが東芝メモリを支配することになれば、四日市を軸としたメモリービジネスのエコシステム(生態系)は崩れる可能性が高い。
                          

(文=後藤信之)

日刊工業新聞2017年9月6日の記事に加筆

後藤 信之

後藤 信之
09月06日
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WDが支配権を取得しない形で東芝メモリの買収に参画し協業関係を深めつつ、今後も東芝メモリ主導で事業展開を進める―。東芝メモリ売却は、こんな最適な形で決着するか。サプライヤーは固唾(かたず)を飲んで見守っている。

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