産業遺産の魅力は語り手とともに

「産業遺産の魅力を分かってもらうのはとても難しい」

 2007年に世界遺産に選ばれた島根県の石見銀山を訪れた。坑道内は頼りなげな照明を外れれば真っ暗で、至る所に水たまりがあるなど足元も悪い。こんな場所で往時は手作業で銀鉱石を掘っていたのだから、人間とは実に欲深い。

 面白おかしく案内してくれた現地ガイドは、最後に「産業遺産の魅力を分かってもらうのはとても難しい」と嘆いた。確かに暗い穴の中をひたすら歩くツアーは、風光明媚を求める“観光”とは趣が異なる。解説なしに歴史的な価値は理解しにくい。

 大手旅行会社の楽天トラベルの調査によると、日本の世界遺産の人気ランキングは1位が古都京都の文化財、2位が厳島神社。一方で18位が石見銀山、19位が富岡製糸場と、産業の歴史を伝える遺産は下位に甘んじている。

 石見銀山の場合、観光客にはなるべくガイドを利用するように勧めている。とはいえ料金もかかるだけに、二の足を踏む人も多いだろう。

 苦労して世界遺産に選ばれても、それだけでは産業遺産の価値は伝えられない。面白くてためになる話ができるガイドの存在が、地域の発信力を高め、旅の思い出を生む。そんなガイドを手軽に利用できる工夫がほしい。決して、欲深い要求ではないと思う。

日刊工業新聞2017年9月4日

土田 智憲

土田 智憲
09月04日
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 最近友人から、民泊マッチングサイトAirbnbを利用しての北海道の旅をし、非常に満足度が高かったという話を聞いた。宿泊時に地元の人の暮らしに触れることができる。いろんな話を聞くことができる。そして次の日に、その話に出てきたところに実際に行って体感する。この暮らしに触れてから場所を巡るというのが、すごく良かったそうだ。
 地域の暮らしには、やはりその地域の産業に紐付いた風習や生活用品など、今も残っているものがある。産業とは、その目に見える採取場所や工場だけに紐付いているものではなく、その周りに住む人々の暮らしもあって成り立っていたものなのだろう。

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