ソニーがディープラーニング無償公開の先に見据えること

技術刷新のサイクルを加速、事業への還元につなげる

 ソニーが自社で抱えるディープラーニング(深層学習)技術の無償公開化に踏み切った。6月に人間の脳を模した機械学習モデル「ニューラルネットワーク」を設計するためのプログラム基盤を公開。続く8月には、専門家でなくてもより簡単に設計できる開発ツールも無償公開した。幅広い技術者の活用を促し、開発コミュニティーを育成するのが狙いだ。ソニーの人工知能(AI)技術は世界を席巻できるのか。挑戦が始まった。

 ソニーのディープラーニング設計ツール「ニューラルネットワークコンソール」。画面上のブロック図を編集するだけでプログラミングできる

 6月に公開した「ニューラルネットワークライブラリーズ」は、ニューラルネットワークをプログラミングするための、機能をかたまりごとに分けた枠組み。

 開発に携わる成平拓也マシンラーニングリサーチエンジニアは「処理能力は競合と比べてもトップクラスの速さで、新しい機能を追加しやすい点が特徴」と、既存のプログラム基盤との差別化をアピールする。

 この取り組みをさらに発展させ、製品開発に携わる研究者や学生など、専門の研究者以外がより簡単に深層学習のプログラムを設計できる開発ツールが、8月に公開した「ニューラルネットワークコンソール」だ。

 ツール上で機能ごとに分かれたブロック図を、マウス操作でコピーしたり貼り付けたり、移動したりすることでプログラムを編集できる。

 視覚的にプログラムを設計できる点が特徴で、画像や各種センサーから取得したデータなど多様なデータへの対応が可能だ。作成したプログラムは先の「ライブラリーズ」で実行し、最も学習効率の良いプログラムを自動で検証できる。

 小林由幸シニアマシンラーニングリサーチャーは「6年前からツールの開発をはじめ、世にあるものと比べてもずいぶんと良いものができた」と自信を示す。

 社内でも2015年から活用しており「数百人規模の利用者がいる」(小林氏)。今後はセミナーや技術サポート体制も充実させ、ユーザー数を広げたい考え。

 無償公開化により自社の基盤技術を使う技術者が増えれば、これを活用する製品やサービスが多く生まれる。技術刷新のサイクルが加速し、事業への還元も期待できる。

 ただこれまで深層学習技術を積極的に無償公開化してきたのは、グーグルやIBM、アマゾンといった米国企業が中心だった。日本企業がこういった取り組みに着手するのは珍しい。

 プロジェクトに関わる、ソニーネットワークコミュニケーションズの原山直樹氏は「ビジネスでは他社が先行しており、我々は出遅れている」と認める。

 まずは「技術者への認知と普及を目指す。IoTの発展や人材確保につなげる」(原山氏)方針で、現在は将来のビジネス展開への仕込みの段階だ。
ソニーのディープラーニング設計ツール「ニューラルネットワークコンソール」

(文=政年佐貴恵)

日刊工業新聞2017年9月4日

政年 佐貴惠

政年 佐貴惠
09月04日
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「AIの性能が向上すれば応用範囲が拡大し、市場が広がる。技術の普及と発展に寄与したい」(小林氏)。今後、自社技術をいかにビジネスにつなげられるかが焦点になる。

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