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東芝メモリ、3年後のIPOを目指すべき

売却は「今期中」困難、3陣営と交渉継続
東芝メモリ、3年後のIPOを目指すべき

東芝の綱川社長

 東芝の半導体子会社「東芝メモリ」の売却で目標とする2018年3月末までの売却完了が困難な情勢になった。31日までの売却先決定を目指していたが断念。同日開いた取締役会で従来の3陣営との交渉を継続する方針を確認した。契約締結の遅れは避けられない状況だ。各国の独占禁止法の審査には6カ月間はかかる見通し。東芝メモリを18年3月期中に売却して2期連続の債務超過を回避し、上場を維持するシナリオは厳しさを増す。

 東芝は提携先の米ウエスタンデジタル(WD)などの「新日米連合」のほか、米ファンドのベインキャピタルや韓国SKハイニックスに米アップルも加わる「新日米韓連合」、台湾・鴻海精密工業による連合の3陣営と交渉する。新日米連合を軸に検討を進め、9月中の契約を目指す。

 東芝は6月に政府系ファンドの産業革新機構なども参加する日米韓連合を優先交渉先に決めた。しかしWDが東芝メモリの売却は提携契約違反だとして訴訟を申し立て、同連合との交渉が停滞した。

 8月には交渉の軸足を新日米連合に移したが、WDの東芝メモリに対する議決権比率をめぐり東芝とWDの意見が対立。交渉は難航している。

 31日までに明らかになったベインの新たな提案は、新日米連合と同様に2兆円規模で東芝メモリを買収し、東芝とWDの訴訟が解決してから革新機構などに株式の持ち分を譲渡する。訴訟リスクを飲み込めない革新機構に配慮した。鴻海も新たな提案を準備しているという。

 東芝は18年3月期中に東芝メモリを売却し、上場廃止となる2期連続の債務超過を回避する計画だ。しかし独禁法審査に加え、売却代金を得る手続きまでを考えれば時間的猶予はない。18年3月末までに売却が完了しない場合、上場廃止を避けるには、東芝本体への資本注入などの措置が必要になる。
日刊工業新聞2017年9月1日
安東泰志
安東泰志 Ando Yasushi ニューホライズンキャピタル 会長
また、ホンハイを除くいずれの陣営の案も少数株主の連合体になってしまうので、株主間協定の交渉が長引くであろうこと、そして、今後の東芝メモリの運営に機動性が失われるであろうことは容易に想像がつく。今のまま、3年後のIPOを目指す方がよいのではないか。市況がいい時に売るべきとの話もあるが、市況など誰にもわからない。よくなる時もあるし悪くなる時もある。

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