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京都のバス「あぶのおすなぁ」

社会実験か作法か
 清水寺貫主・森清範師の法話「言霊(ことだま)と文字(もんじ)」を18日付当欄で活字にしたところ、師から丁重なお礼状を頂戴した。温もりあふれる文字の向こうに残暑厳しい故郷・京の街を思う。

 清水寺、祇園、知恩院…東山三十六峰の麓(ふもと)・東大路通は観光ロード。新幹線を降りて、京都タワーを見上げる市バス乗り場へ。行列はいつもの風景。これくらいなら乗れると思いきや、目の前で満員に。納得できないまま次のバスに乗る。ギュウギュウ詰めではない。なのに…。

 床には色とりどりのキャリーバッグがギッシリ。外国人観光客のマナーが苦々しい。杖をついたお年寄りがバッグをよけながら「あぶのおすなぁ」と降りていった。

 「京都駅にある荷物預かり所やホテルへの配送(ともに有料)を利用するようにお願いしているのですが」と京都市交通局の担当氏も思案顔。重いバッグをころがしての観光は、楽しいのだろうかと首をかしげる。

 市民の足・バスの乗降に苦労し時間がかかると渋滞の一因となる。積み残しもある。企業活動に支障がでないとよいが。混雑を少しでも緩和しようと、10月から東山を走る「洛バス」で前乗り中央降車の社会実験が始まる。残暑も混雑も「あんじょう」よろしゅう。
日刊工業新聞2017年8月29日「産業春秋」
土田智憲
土田智憲 Tsuchida Tomonori かねひろ
海外の方が旅行前に購入する旅行ガイドブックに「大きな荷物がある場合は駅に預けるか、ホテルに送ってしまってから観光するのが便利。荷物を減らすと、日本の静かな心をより深く感じられる。」みたいな一言が書いてあるだけでも、だいぶ認知できるのではないだろうか。みんなができると楽しくなる観光地のマナー・作法を、旅行者ガイドブックは作れるのではないかと、可能性を感じた。

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