住友商事が投資判断基準に導入した6つのマテリアリティとは?

田渕専務執行役員インタビュー「社会に応じて変えるムービングターゲット」

 住友商事はESG(環境社会統治)経営を実践するため、4月に「社会とともに持続的に成長するための六つの重要課題(マテリアリティ)」を定めた。同社がなぜESGを経営の根幹に据え、今後どう取り組んでいくのか、田渕正朗専務執行役員に聞いた。

 ―住友商事が4月からESG経営に取り組む背景は。
 「住友商事はこれまでも社会課題に向き合い、社会に役立つことをやってきたという自信がある。ただ、国際的にESG投資の考え方が重視されるようになり、市場で正当な評価を受けるためには、総合商社として、社会課題に向き合って事業をしていることを発信していく必要がある」

 ―六つのマテリアリティはどのように定めたのでしょうか。
 「社内に横断的なタスクフォースを設置し取り組むべき社会課題を上げ、国際機関や有識者などの意見も聞き、『地球環境との共生』『地域と産業の発展への貢献』『快適で心躍る暮らしの基盤づくり』『多様なアクセスの構築』『人材育成とダイバーシティの推進』『ガバナンスの充実』の六つを定めた」

 「4月からは経営会議で投資の審議をする際、その案件が六つのどれに合致するのか、明示するように義務付けている」

 ―従来と比べ、意思決定のプロセスに違いがあるのでしょうか。
 「これまで新たな投資案件を審議する場合、主に収益性やリスクを数値的に分析し、判断してきた。4月からはこれに加え、六つのマテリアリティに合致しているか、これに沿ってどう取り組むかを、担当者がきちんと説明する必要がある」

 ―マテリアリティに照らし、投資しないという判断になることはあるのでしょうか。
 「例えば石炭火力発電はCO2を排出するが、電力はライフラインで、生活に欠かせない。ただ、国により発電事情は異なるので、マテリアリティと各国の状況を審議していく中で、ガス火力や再生可能エネルギーが増えてくる可能性もある」

 ―ESG経営を実践する上で、今後の課題は。
 「それぞれの事業がどのように進捗(しんちょく)しているのか、評価していく必要があり、その評価の方法を決めなければならない。また、社員一人ひとりにマテリアリティを浸透させるため、4月からワーキンググループを組成し、社内説明会を開くなど、取り組みを始めている」
田渕専務執行役員

(聞き手=高屋優理)

日刊工業新聞2017年8月25日

高屋 優理

高屋 優理
08月29日
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田渕専務執行役員は六つのマテリアリティは経営理念などと異なり、社会の変化に応じて、変えていく「ムービングターゲット」だと話す。現状、具体的な取り組みは模索の段階にあるが、2018年4月から始まる新たな中期経営計画で、六つの重要課題が事業戦略のカギを握ることになりそうだ。

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