マツダのシミュレーション開発は、「広島」のサプライチェーンを変えるか

デジタルイノベーションセンターを軸に中小育成

 広島県で中小企業を対象に高度なシミュレーションシステムの普及策が動きだす。県の外郭団体のひろしま産業振興機構(広島市中区)が10月に広島県東広島市に開設する「ひろしまデジタルイノベーションセンター(HDI)」で、スーパーコンピューターや解析ソフトに加え人材育成サービスを提供する。背景には地場大手のマツダがシミュレーションシステムを使った自動車開発に大きくかじを切っていることがある。

 「広島をモデルベース開発(MBD)の聖地にしたい」。HDIの所長に就任した安藤誠一氏は力を込める。安藤氏はマツダからの出向。MBDはシミュレーションを使った自動車開発のことで、安藤氏はその高度化に携わってきた。

 マツダは自動車技術「スカイアクティブ」の開発にMBDを活用し、短期間に多くの車種やエンジン・変速機などを市場投入することができた。特にエンジン開発部門でMBDの活用が進んでおり、ほかの部門にも広げるためエンジニアの育成を急いでいる。2016年に広島大学で開講した講座では、3年間で900人を受講させる計画だ。

 だが自動車の開発は自社だけではできない。地場の部品メーカーをいかに巻き込むか。そこで期待されるのがHDIの取り組みだ。

 HDIでは高性能ワークステーションを7台導入。加えて、外部のスーパーコンピューターをクラウド方式で使える環境を整える。特徴的なのが、各種解析ソフトや人材育成まで含めて提供することだ。

 スパコンで動く流体解析や構造解析などの高度で高価なソフトウエア、プレスや鋳造、樹脂成形といった生産シミュレーションソフトなど15種類を導入。それらを使いこなせるよう研修サービスも始める。年間150人程度の受講を目指す。

 至れり尽くせりの内容だが、こうした高度な計算環境の整備で、広島県は出遅れてきたという。「大学をはじめ部品メーカーやエンジニアリング会社にもMBDを使いこなす土壌ができれば、地場産業の育成にはきわめて有効」(安藤氏)。

 マツダには、いずれ車1台をまるごとシミュレーション環境上で開発できるようにしたいという構想があるようだ。部品メーカーも自らが担当する部品のデータを持ちより、車全体のデータを使って検証しながら、さらに部品の性能を高めていく姿を描いている。
                     

(文=広島・清水信彦)

日刊工業新聞2017年8月24日

清水 信彦

清水 信彦
08月25日
この記事のファシリテーター

新しい時代の車産業サプライチェーン。広島県がモデルケースになれるか注目される。

この記事にコメントする

  

ファシリテーター紹介

記者・ファシリテーターへのメッセージ

この記事に関するご意見、ご感想
情報などをお寄せください。