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109系ファッション会社、デリバティブ倒産の本質

ゾディアック、「流行」に取り残される
 アパレル製品の卸売りを手がけたゾディアックは7月19日に東京地裁より破産手続き開始決定を受けた。ゾディアックは、「109系」ブランドとして一世を風靡(ふうび)した「EGOIST」を展開するエゴイストグループの商品仕入れ部門を独立させる形で設立。以後、同グループの物流業務を担い、2012年8月期に売上高約63億500万円を計上していた。

 しかし、グループからの受託数量減、円安などから採算の合わないグループ企業との取引から撤退。同グループのアセットナイン(旧デュラス)との取引が中心になっていた。

 旧デュラスもまた、エゴイストグループが新ブランド「DURAS(デュラス)」の設立に伴い分社化し設立したもの。ギャル系ファッションブランドとして知名度は高く、12年1月期に売上高約49億9000万円を計上していた。

 倒産の直接のきっかけは複数の為替デリバティブ契約だった。08年ごろには年数億円規模の損失が出る状況となり、累計で12億円に上る損失を余儀なくされた。さらに、約14億円の解約清算金債務の負担もあり財務が著しく悪化。その間、金融ADRを申し立てたが、十分な負債の減免を得られなかった。

 仕入れ窓口であるゾディアックの財務悪化は、旧デュラスにも波及。その売上高は、全盛期の約3分の1に減少した。今年に入り、別企業にデュラスブランドを譲渡し、6月13日に旧デュラスは事業を停止。その仕入れ窓口であるゾディアックには事業継続の術は残されていなかった。

 「Fashion」の直訳は「流行」である。ファッション業界とは流行そのものであり、流れに取り残されれば淘汰(とうた)される。直接の倒産要因はデリバティブだが、109系ブランドの往時を考えると隔世の感がある。アパレル業界における審査の難しいところだ。
(文=帝国データバンク情報部)
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役デジタルメディア事業担当
米国では一世を風靡したアバクロンビー&フィッチが業績不振で身売りに出たが、条件が折り合わず白紙になった。一方でCEOが交代、店舗のテコ入れやオムニチャネルの推進で復調し始めているという。消費者は以前に増して本当に付加価値があるものを見極めるようになっている。とても興味深い業界でもある。

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