「ASEAN4.0」の行方

3.1や3.2では…

 外資誘致を通じて工業化が進んだ東南アジア諸国連合(ASEAN)で、IoT(モノのインターネット)や人工知能(AI)活用による産業の高度化が始まっている。先頭を走るのがシンガポールだ。

 シンガポールの化学プラント集積地、ジュロン島。1984年から現地で操業している住友化学は日本国内に先駆けて、化学プラントへのAIの導入試験を進めている。シンガポール経済開発庁(EDB)の支援を受けたIoTプロジェクトの一環だ。

 住友化学はプラントの機器の予測保全や生産効率の向上に取り組む。土佐泰夫IT推進部理事は「シンガポールはIT先進国。新しい技術が身近にある」と日本より先にシンガポールで実証試験をする理由を語る。培ったノウハウは日本を含む世界の拠点へ広げる方針だ。

 横河電機もEDBの支援を受け、シンガポールに東南アジアの技術開発組織「コ・イノベーションセンター」を16年に設置。IoTを活用した電力施設の機器診断技術を確立し、機器の劣化を高精度に予測する仕組みを構築した。

 シンガポール政府は16年に研究開発戦略「リサーチ・イノベーション・エンタープライズ(RIE)2020」を発表。20年までの5年間に、産業用IoTやロボティクスなど最新の先端製造技術の研究支援に32億シンガポールドル(2560億円)を投じる方針を示した。

 EDBもこうした先端技術を駆使した「価値創造型」の企業に特化して支援する。ドイツ発祥の第4次産業革命「インダストリー4・0」(I4・0)を自国でも取り入れるべく、独シーメンスや米ボストン・コンサルティング・グループと組み、企業のI4・0の計画立案もサポートする。

 さらに「人材育成に必要な経費も政府が一部負担している」(リム・スウィニェン副次官)。アジアにおけるモノづくりの高度化技術をシンガポールから発信する考えだ。

 タイも負けじと動きだした。タイ政府は産業の高度化施策「タイランド4・0」を提唱。自動車産業が集積するタイ東部の東部経済回廊(EEC)を重点地域に指定し、イノベーションや生産性をキーワードに持続的に高い付加価値を創出する経済社会を目指す。

 具体的には、次世代自動車やロボティクス、スマートエレクトロニクスといった技術を奨励。EECでこうした技術の研究開発や工場投資を行う際、最長15年間(従来は8年)法人税を免除する。

 ただ「既存の3・0(重工業)を3・1や3・2にアップデートするだけでは」(みずほ総合研究所の酒向浩二上席主任研究員)とタイランド4・0の先進度を疑問視する声もある。ASEAN発の産業高度化がどこまで進むか、注目されている。

(大城麻木乃、鈴木岳志、孝志勇輔)

日刊工業新聞2017年8月22日

八子 知礼

八子 知礼
08月23日
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 アジア各国でもIoTへの取り組みが推進され始め、現地進出している日本企業も積極的に取り組んでいるという話。国内がConnected Industriesを掲げるも、大手はまだまだ様子見かわかっていても手をこまねいている状況からすると前進しているだけ評価できる話です。末尾の方のコメント「既存の3・0(重工業)を3・1や3・2にアップデートするだけでは」はタイに向けてではなく、むしろ日本が自認すべき話。いつまでも生産性にこだわり、新しいビジネスモデルを生み出す方向の発想に自らを向けることができていないのはむしろ日本の大きな課題です。

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