慶応大が狙う寄付主体の「基金1000億円」は可能か

長谷山塾長に聞く「卒業生の母校への強い絆に、大きな目的と施策を説明する」

 資金調達や運用で伝統的に注目される学校法人の一つが慶応義塾だ。リーマン・ショック後に悪化した財務を立て直した前塾長の清家篤氏の後任として、5月末に就任した。慶応義塾の個性を研究や国際化で発揮する原資として、寄付を主体とする大学運営の第3号基本金を「現在の650億円から1000億円へ拡大」する目標を掲げた長谷山彰塾長に、目指す思いを聞いた。

 ―運用益を研究費や奨学金に使える3号基本金の拡大では、背景に研究資金不足の問題があるそうですが。
 「私立の研究型大学では、研究資金の2割程度が自己資金というのが一般的だ。これに対して慶応では4%とかなり少ない。研究資金のうち外部競争的資金の占める割合が高まったことが影響した。文系を含め、じっくりと長期で取り組み、思考や交流を大切にする分野の研究も、基金の運用で充実したい」

 ―どの大学も寄付金増を口にしますが、容易でありません。 
 「奨学金基金を運営する『慶応義塾維持会』は、120年以上前に卒業生有志がつくったものだ。慶応の卒業生の母校への強い絆、支援に対する精神は昔からある。大きな目的とその施策を説明し、約40年先の創立200周年までに1000億円へ増やしたい。また、これまでは指定寄付が多く、小規模で運用益も十分でなかった。これらの統合も進める」

 ―自己資金充実のもう一つの目的は国際化ですね。
 「慶応は創立以来、個人の力を高めて社会を動かすのが伝統だ。意欲ある日本人の若者を世界で活躍するように育てている。国際系の学部新設で外国人教員や留学生を急増させ、世界大学ランキングの指標をよくする大学も存在するが、それらとは一線を画する。国際化は世界共通ルールに沿った標準化を図るものだが、個性も重要だ」

 ―具体例をお願いします。
 「例えば海外大学などとの『ダブルディグリー』(共同学位)は、他大学と比べ格段に多い。文部科学省の博士課程教育リーディングプログラム(リーディング大学院)も、文理別の修士と博士という三つの学位に、半年の留学を課して高評価を得た。大学は各部局が主体的にアイデアや手法を提案するが、まとめて大きな方向性を示すのが執行部の役割だ。よく動く10本の指を固めて、今度は拳の力を発揮したい」
慶応義塾塾長・長谷山彰氏

【略歴】長谷山彰(はせやま・あきら)81年(昭56)慶大院文学研究科修士課程修了、84年同博士課程単位取得退学、87年駿河台大法専任講師、90年助教授、94年教授。97年慶大教授、07年文学部長、09年常任理事。法学博士、秋田県出身、64歳。

日刊工業新聞2017年8月18日

山本 佳世子

山本 佳世子
08月19日
この記事のファシリテーター

船の方向転換に気づくのは「かじを切ってしばらくしてから」と、「地味に見えて着実な変化を導く」意識が強い。前塾長時代は施設担当として建物の耐震化を主導した。さらに新病院棟建設を進めるほか、「本格的な博物館を学内につくりたい」との思いもある。堅さに華やかさを加え、次の変化をリードしていく。

この記事にコメントする

  

ファシリテーター紹介

記者・ファシリテーターへのメッセージ

この記事に関するご意見、ご感想
情報などをお寄せください。