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射出成形機の世界最大手、中国企業が自ら変わり日本メーカーも変える

海天国際HD・張総裁に聞く「必要なのは改革であり、改善では足りない」
射出成形機の世界最大手、中国企業が自ら変わり日本メーカーも変える

海天国際の経営報告書より

 射出成形機の世界最大手、中国・海天国際ホールディングス(HD)が、2016年に資本参加したニイガタマシンテクノ(新潟市)との連携を深めている。合弁会社を設立し、射出成形機の共同開発に乗り出した。海天国際の張剣鳴総裁は、ニイガタの成形機事業を「これまでの“一品モノ”中心から量産に変えるべきだ」と強調し、初年度の17年の販売台数を1・5倍の600台に引き上げる。

 ―海天国際は日本の主要成形機メーカー全社の合計生産台数を上回ります。
 「ドイツの業界団体の統計によると、海天国際は09年から生産台数が世界首位だ。16年は約3万台、17年は5月までのペースが続けば2割増の3万6000台で過去最高を記録しそう。生産能力は足りている。中国で能力増強の予定はないが、海外は別。ドイツ工場は第3期工事中だ」

 ―中国は設備需要が盛り上がっています。
 「中国の業界団体の調査では、1―4月受注は前年同期比約30%増だ。各社忙しい。好況の背景には、製造業向けの優遇政策がある。去年は金融への投資が活発だった反面、製造業は冷え込んだ。政策転換で製造業を重視するようになった。中韓関係の悪化も一因だろう。韓国の企業、製品ではなく、中国、日本、欧米の製品が選ばれている。この先は成長スピードが鈍化するかもしれない」

 ―ニイガタの成形機事業の評価は。
 「必要なのは改革であり、改善では足りない。差別化へのこだわりが強すぎ、一品モノに寄りすぎている。新会社の設立を機に生産体制と経営モデルを変え、量産にシフトする。海天国際の強みは規模だ。これをニイガタと共有する。海天国際としてはニイガタの品質と技術を取り入れたい。新会社で両社が互いに欲しいものが手に入る」

 ―ニイガタとの連携で海天国際の製品を日系企業に売る機会が増えそうです。
 「日系への販売は年間約1500台でまだまだ少ない。シェア拡大の実力と自信はある」

 ―日本勢が得意の電動機の状況は。
 「年間3万台のうち1割が電動機だ。1割とは少ない印象だが、3000台と考えれば日本の主要各社と遜色ないだろう。5年後には間違いなく世界一になる。会社としては利益を出すことが最も重要だ。本年度は、海天傘下の電動機ブランド『ザフィア』の利益がどの競合よりも上回るはずだ」
海天国際HD総裁・張剣鳴氏

(聞き手=六笠友和)
日刊工業新聞2017年7月27日
六笠友和
六笠友和 Mukasa Tomokazu 編集局経済部 編集委員
12年に日刊工業新聞社がおそらく日本のメディアとして初めて張総裁を取材した際、規模をひたすら重視する姿勢を感じた。それだけに、今回の取材で「利益」という言葉が出てきたのは意外だった。いたずらに売上高を追わず、内容を伴った成長を目指す成熟した会社に変貌した印象だ。ニイガタが量産メーカーになる時、いかに既存客をつなぎ留め、同時に新規顧客を獲得していくか。新しい戦略が必要だ。

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