できたよ、ドラえもんハンド。柔軟性とグリップ力を両立

産業ロボットに応用すればインパクトは大きい

 ドラえもんのような何でもつかめるロボットハンドの開発が進んでいる。ドラえもんの手は見た目はただの球体だが、対象に合わせて変形してどんなモノでも持ててしまう。変形時の柔軟性と、つかんだ後のグリップ力を両立させている。魔法のように万能な機構だが、現実世界でも粉体の固化と液化を切り替えるジャミング転位現象を利用すると実現できてしまう。中身はコーヒーや白米だ。身近な食材がドラえもんハンドの実現に貢献している。

 東北大学の多田隈建二郎准教授らは、コーヒー豆をひいた粉で万能ハンドを開発した。流線形のハンドがつかみたい対象に合わせて柔らかく変形する。モノをつかむ時は3ニュートンの力で変形し、つかんだら30ニュートンの力をかけても変形しない。柔らかさと堅さを10倍以上切り替えられ、柔軟性とグリップ力を両立させた。

 万能ハンドの中ではコーヒー粉が液体や固体のようにふるまう。ハンドの先端はシリコンゴムの二層構造になっており、隙間にコーヒー粉が詰まっている。内側の空気を吸引して粉を圧縮すると固化し、空気を入れて粉と粉の間に隙間をつくると液体化する。

 多田隈准教授は「固体では粉のギザギザがかみ合いロックし、空気を入れ隙間を作ればさらさらと流れて変形する。ちょうどいいコーヒー豆のひき方がある」と説明する。

 ロボットのハンドとして作業させると1・3キログラムの部材を持ち上げられ、配電盤などの押し込み式ボタンを操作できた。災害対応など事前に操作対象を特定できない仕事に向く。3年をめどに実用化を目指す。

 金沢大学の渡辺哲陽准教授らは白米を採用した。コーヒーやビーズ、砂利と白米でジャミング転位の固液差を測り、最も差のあった白米を選んだ。渡辺准教授は「米粒の独特な形が粒と粒をロックさせる」と説明する。日本人の主食は米だけに、日本発のロボットが米でできていてもおかしくはない。

 さらにジャミング転位に加えて、粉体の中に人間の指のような骨格構造を組み込んだ。ワイヤで指の曲げを制御し、関節ごとに仕切り弁を設け、米粒が流れないように工夫している。

 4本指のハンドとして小径ネジやペットボトルなど幅広い形状、重量のモノを持てることを確認した。1―2年で実用レベルに引き上げる。

 ドラえもんはロボット好きな少年なら誰しもが憧れる。4次元ポケットや頭脳の実現は遠いが、万能ハンドは実用化が近い。工場で流れる部品ごとにロボットハンドを交換しなくてすむため、産業ロボに応用すればインパクトは大きい。
金沢大の白米製ハンド。4本指の中には骨とワイヤが入っている


(文=小寺貴之)

日刊工業新聞2017年8月16日

小寺 貴之

小寺 貴之
08月16日
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日本人の体は米でできているので、ドラえもんだって米でできていてもおかしくはないと思いました。食べ物は長時間使っていると劣化する点、水分に弱い点をどうにかすれば良いレベルになると思います。また米もコーヒーも安い点は良いところです。

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